概要
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有機化合物のスペクトル・デ−タベ−ス(SDBS)のご紹介

SDBSは主に有機化合物を対象にして電子衝撃法による質量スペクトル(EI−MS)、FT−IR法による赤外分光スペクトル、1H核磁気共鳴(NMR)スペクトル、13C NMRスペクトル、レーザーラマンスペクトルと電子スピン共鳴スペクトル(ESR)の6種類の異なったスペクトルを1つの化合物辞書の下に収録した総合的なスペクトル・データベース(DB)です。コンピュータによるスペクトルDB構築の研究を始めたのは 1970年代であり、1982年に汎用大型コンピュータに現在のフォーマットでデータの集積活動を開始しました。18年間の展開の後に汎用大型コンピュータは1999年3月末で終了しました。2001年独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)発足と同時に産総研の計測標準研究部門有機分析科高分子標準研究室(現在 計量標準システム科 計量標準基盤研究室)に運営が引き継がれEI−MS、Hおよび13C NMRとFT−IRと化合物辞書のデータの追加・更新の活動を継続しています。1997年からはRIO−DB(Research Information Data Base)のシステムを通してTACC(Tsukuba Advanced Computing Center)よりインターネット無料公開を行っており、公開以来のアクセス数は2011年2月には3億5千万件を超えました。SDBSは主に有機試薬のスペクトルパターンを収録したファクトデータベースであり、日本から世界へ発信するDBとして重要な役割を果たしています。2011年5月末現在のデータの概数は次の通りで追加更新中とあるものは毎年データを追加しております。


化合物辞書: 約 34000 化合物 追加更新中
MS: 約 24700 スペクトル 追加更新中
HNMR: 約 15400 スペクトル 追加更新中
13CNMR: 約 13600 スペクトル 追加更新中
FT−IR: 約 52500 スペクトル 追加更新中
ラマン: 約 3500 スペクトル
ESR: 約 2000 スペクトル

 大部分のスペクトルは本研究所で測定してデータベース化しました。EI−MS、HNMR、FT−IR及びラマンスペクトルはデータベース活動開始以来、13C NMRは2001年以降スペクトロメータからデータをデジタル転送して、精度の高いパターンデータをマスターファイルとして蓄積しています。公開用データはアクセス時にストレスを感じない配慮からサイズを小さくしています。Hおよび13C NMRは可能な限りスペクトルの帰属をつけて公開しています。

収録している有機化合物は主として市販試薬です。炭素数6〜16の有機化合物が全体の2/3を占めており、多くの試薬が東京化成工業株式会社から無償提供されています。大型コンピュータで構築された時代のデータには小文字表記はありませんでした。化合物名や分子式を適正に表現するように変換を行なっていますがまだ完全ではありません。 

 私達は質の高いデータベースを構築するために努力していますの間違いをみつけた時には“コンタクト”ボタンをクリックして表示されるフォームを利用してご連絡下さいますようお願いいたします。フリーのデータベースなので使用上の責任は使用者にあります。


各スペクトルの詳細


MSの測定条件

 MSは電子衝撃法で測定しました。電子加速電圧は75eVで、イオン加速電圧は 8−10kV です。直接導入法あるいはリザーバ法が用いられています。質量数の精度は0.5です。質量分析計はJEOL JMS−01SGで開始し、2001年度以降は JEOL JMS−700を用いています。


H NMRの測定条件

 H NMRの測定装置と測定周波数は、JEOL FX−90Q(89.56MHz)、JEOL GX−400(399.65MHz)で、2001年度以降はJEOL AL−400(399.65MHz)を用いています。パルスフリップ角度22.5〜30度、パルス繰り返し時間30秒で測定して積分強度の信頼性を確保しました。測定温度は通常30℃に設定しています。すべてのスペクトルから、溶媒、TMSなどの基準物質や明らかな不純物由来のピークを除去して公開しています。マスターデータのスペクトルデジタル分解能は大多数のスペクトルに対して90MHzと400MHzの時に各々0.0625Hzと0.125Hzで、産総研で新規測定している400MHzの分解能は0.0625Hzです。標準のスペクトル幅の外側にピークがある場合には、スペクトル幅を広げて測定しています。サンプルの条件は各データに示してあります。Hシフト値の基準は有機溶媒ではTMS、重水溶液ではTSPです。スペクトルの帰属が難しい時には、H−H COSY、C−H COSY、HMQC、HMBCなどとともに、温度を上げたり水を加えたりして測定しています。またLAOCNの計算を併用してスペクトルパターンを確かめていることもあります。それでも帰属が明確でないときには帰属に*をつけています。

 スペクトルコードがHPMで始まるスペクトルは化学シフト値とスピン結合から300MHzのスペクトルパターンを作成しました。HPM−00はHSPのために測定したスペクトルから化学シフト値と結合定数を抽出しました。HPM−01は当研究室で論文発表したデータです。HPM−02/03/04は文献から収録しています。


13C NMRの測定条件

 13C NMRの測定装置と測定周波数は次の通りです。NEVA NV−14(15.087MHz)、JEOL FX−90Q(22.530MHz)、Varian XL−100(25.160MHz)、Bruker AC−200(50.323MHz)、JEOL FX−200(50.183MHz)、JEOL GX−400(100.535MHz)と各種の装置を用いていましたが、2001年度以降はJEOL AL−400(100.40MHz)を用いています。パルスフリップ角度は22.5〜45度、パルス繰り返し時間は4〜7秒、デジタル分解能は0.025〜0.045ppmで、測定温度は、H NMRと同じく通常30℃に設定しています。スペクトルコードがCDSで始まるスペクトルは、測定したデータのピーク値、ピーク強度、線幅の情報からピークをローレンツ曲線と仮定して再構築したスペクトルを、それ以外は実際のスペクトルから、溶媒、TMSなどの基準物質や明らかな不純物由来のピークを除去して公開しています。

サンプルの条件は各データに示してあります。13C化学シフト値はTMS基準で、他の基準物質が使われた場合にも TMS基準に変換してあります。スペクトルの帰属にはC−H COSY、HMQC、HMBC、GASPE、DEPT、Hによって分裂したスペクトルの測定などを行っていますが、それでも帰属が明確でないときには*や#を付けて、帰属が入れ替わる可能性を示しています。帰属不可能なスペクトルでは帰属番号の代わりにCを入れています。


FT−IRの測定条件

 FT−IRはNicolet 170SXではじまり、2000年度以降JASCO FT/IR−410を用いて測定しました。Nicolet 170SXの分解能は0.25cm−1で測定してありますが、データベースに収録する時の波数間隔は4000〜2000cm−1が0.5cm−1で、2000〜400cm−1は0.25cm−1です。JASCO FT/IR−410で測定したデータの分解能と収録波数間隔は0.5cm−1です。液体試料は液膜法で、固体試料はKBr錠剤法とNujolペースト法で測定してあります。


ラマンスペクトルの測定条件

 ラマンスペクトルはJASCO R800レーザーラマン測定装置で測定しました。480nmの励起光を用いて4000〜0cm−1の領域でスリット幅100〜200μmで測定しました。サンプルは液体、粉末、粒状体です。データの収録活動は終了しました。


ESR

ESRスペクトルの出典、サンプル条件と測定条件は個々のデータに記述してあります。ESRデータの収録活動は1987年に終了しました。


運営スタッフと活動

計量標準基盤研究室が中心となり、定期的に会合を開いてデータの質や試料に関する情報交換を行っています。また、質問への対応や、辞書整備、収録済みのスペクトルデータに関するメンテナンスなどを行っております。公開を前提とした試料提供を受け付けられるよう検討しておりますが、今の所準備が整っておりません。試料の無償提供については運営スタッフまで御連絡ください。このようなスペクトルデータが必要であるといった要望に対してはできる範囲で対応しております。教育関係でのデータの利用や有償提供について要望がありましたらフォームを利用して運営スタッフに連絡ください。


現在の運営スタッフは、

衣笠晋一、山路俊樹、齋藤剛、和佐田宣英、滝澤祐子、浅井こずえ、鍋島真美、小野千里

です。

それぞれが役割分担しながら鋭意データの質の確保と利便性の向上に努めております。





独立行政法人産業技術総合研究所